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time
10:23

地域のまとまりと小水力発電

name
田中 弘道
organization
大人発電農業協同組合 理事長
地域のまとまりと小水力発電

今年の夏も暑かった

夏が始まった7月下旬。

私たちは宮崎県日之影町で、水力発電所を作った田中弘道さんを訪ねました。

この地域にも、棚田を潤すために先人たちが築いた「山腹用水路」が今も残っています。この用水路は、険しい山の斜面に沿うように流れ、山を越えた川から水を引いています。こちらの用水路では、山を迂回するのではなくトンネルを作って水を通している箇所も見せていただき、先人たちが稲作のために苦労した様子がうかがえました。田中さんたちは、この用水路を使って小さな水力発電(小水力発電)を行っています。

【小水力発電とは?】

「小水力発電」は、小さな川や農業用の水路など、今まで使われていなかった小さな水の流れを利用して電気を作る発電方法です。

仕組み:水を高い場所から低い場所へ流し、その勢いで水車を回して電気を作ります。ダムのような大きな施設は必要なく、小さな設備で発電できるのが特徴です。

メリット:CO2を出さない、環境に優しいクリーンエネルギーです。大規模な工事が不要なため環境への影響が少なく、身近な水路などを利用できるため、地域に合った形で導入しやすいという点があります。

 元気ハツラツ田中さん

田中さんは森林組合に属し、今でも有害鳥獣駆除員として、シカやイノシシなどを捕まえる仕事もしている78歳の方です。

田中さんは平成23年に大人用水組合の組合長に就任しました。すでに用水路の整備は終わっていましたが、「何か地域のためにできることはないか」と考え、小水力発電に注目しました。

「用水路の水を使って発電し、売電で得た収益を地域に還元することで、農業施設の維持や、伝統芸能を守っていくのに役立つと考えたんです」と田中さんは語っていました。

大人地区の伝統文化

                                                         引用:日之影町観光協会

大人地区には、九州で唯一の農村歌舞伎「大人歌舞伎」と、豊作を願う「大人神楽」が今も受け継がれています。高齢化が進む中で、こうした大切な文化を守り続けるためにも、安定してお金が入る仕組みが必要だと考えました。

 

田中さんの呼びかけで、平成28年に大人発電農業協同組合が設立されました。農家ではない人も含め、公民館のメンバー全員が参加し、平成30年には「大日止昴小水力発電所」が完成しました。

田中さんは当時を振り返って、「当時は話をまとめるのにとても大変でした。私たちの地域は農家だけでなく非農家の方もいます。そもそも用水路の大切さや重要性を説くこともしましたし、いろいろな権利の問題でも解決することが多かったです。他の地域でも話がまとまらず頓挫することも多くあるそうです。ただ、私たちは歌舞伎や神楽といった伝統行事があって、それにみんなで参画するからまとまることが出来たのかなぁと感じています」と話されていました。

初年度の売上は1,000万円を超え、収益は、地域の防犯灯の設置や公民館の運営、歌舞伎や神楽の衣装代などに使われました。

文化が地域のまとめ役だった、私たちの世界農業遺産らしい姿を感じました。

 

発電所を見に行こう

 

最後に発電所と用水路から水を引く場所を見せていただきました。発電所では、石蔵の中に発電する機械が設置してあり、夏場は熱を逃がすためにエアコンが常に稼働しているそうです。また、壁面には関係者の方のお名前が掲げてある看板があり、多くの方の協力で成り立っているのだなぁと改めて感じました。

用水路から水を引く場所には、プールのような水たまりがあり、ここから落差85mを利用して発電を行っているとのことです。

発電所を維持していくためには、定期的に用水路の蓋を開けて掃除をする必要があります。また、雷が落ちたり停電したりした時の対応も、決して簡単なことではありません。

文:五ヶ瀬中等教育学校 4年 長田雄太

取材時期:2025年7月

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