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21:52

山腹用水路を知る。

name
山腹用水路
organization
日向用水
山腹用水路を知る。

山腹用水路と美しい景色

今回は高千穂町岩戸に古くから伝わる山腹用水路の日向用水を取材しました。前提として山腹用水路とは世界農業遺産高千穂郷椎葉山地域全体に山間を沿うように作られた地域内の用水路を合わせると全長500kmの大規模な用水路です。日向用水はこの山腹用水路に含まれており、岩戸川上流から流れている長さ14kmにもなる用水路です。

用水路の下流部分から上流部分に沿うように道を登っていき、途中、上岩戸大橋や常光寺の滝を視察し用水路がどのような構造をしているか、滝の水をどういった構造と方法で活用しているかなども実際に目で近くに行って見て知ることができました。日向用水は前述の常光寺の滝が起点となっており、景観としても見栄えのある施設でした。


橋から見た景色は広大な青空と山々の立ち並ぶ姿があってとても美しく、滝は大きく絶えず流れ続ける水と時折飛んでくる水しぶきも相まって迫力があって圧倒されました。
普段の生活ではあまり見られない、体感できない景色だったので思わず見とれてしまうほどでした。

はじめまして佐藤さん

上岩戸大橋と常光寺の滝の視察後、同じく岩戸にある農家の佐藤光宏さんのご自宅に訪問し、普段のお仕事の様子や岩川用水の日頃の使い方についてお話を伺いました。実は佐藤さん、このGIAHSアカデミーに協力してくださっている佐藤翔平さんのお父様なのです。
事前に翔平さんから『どんどん質問しないとあんまり喋らないから〜』
と言われていましたが、いざお話を聞くとなると気さくで積極的に話してくださり、質問にも丁寧に答えてくださるとても優しい方でした。佐藤さんは過去にサラリーマンとして働かれており53歳のときに退職されそれから専業農家になり、現在3年目になるとのことでした。

山腹用水路、どうやって使ってる?

佐藤さんは普段、お米を作ったり牛を育てられているとのことでした。日向用水の普段の使い方としては、5月の田植えの時期になると用水路の大きな蛇口を捻って水を引いたり、必要なときに用水路の門を開けて使うと言った感じでした。昔は何軒も家があり、多くの人が農家をしていたためそのためそれぞれの家庭で大量の水を必要とし、日にちを決めて用水路の水を使っていたようです。稲刈りが終わり冬になるとある程度の作業が一段落するので用水路の流水を止めてまた田植えの時期になるのを待ちます。3月の暖かい季節になると冬から春にかけて溜まった泥や風で飛んできた枝などを取り除くために掃除をします。
佐藤さんが住まわれるあたりは各地区ごとに範囲を決めて掃除をされるようです。

用水路の敵、農家の敵 台風

用水路を使うにあたって一番大変だとおっしゃったのが、台風が来るときだと言います。台風が来るともちろん大量の雨が降るので水が溢れてしまわないように用水路の水を止めるのですが、それでも山から流れてきた水などで水かさが増してしまうので田んぼに流れてしまわないようにせき止めたり、影響の少ない川に水が流れていくように調整したりするそうです。

更に大変なのが台風が過ぎたあとです。
いろいろな方向へ流れていかないように板を落として塞いだりする箇所もあるそうですがそれでも台風が過ぎ去ったあとは台風が通る際に溜まった泥や葉っぱ・枝の掃除をすることが3月に行う掃除と同じく一番苦労するそうです。

伝統。あとお米

お話を聞かせていただいている際にとても印象に残ったことが2つあります。
1つ目は用水路の掃除について話されたときのことです。掃除をするには狭く長くとても労力を必要とするので大変なことが多いが伝統を守りこれからも用水路を使えるようにしていくためだとお話になったのを受けて思ったのが、日本では常日頃から伝統という言葉をよく聞きますが現代の若者の一部には伝統を邪険に扱うような人もいたりします。
ですが、先人たちがいなければ今の便利な世の中はないし今回で言えば山腹用水路がなかったわけで伝統を受け継ぎ守り抜くというのは非常に重要なことだと、改めて感じました。

2つ目は佐藤さんも作られているお米の話になったときのお話です。
現在日本ではお米の価格が高騰していますが『農家からしたら嬉しいよねェ』と笑いながらおっしゃっている姿がとても印象的でした。確かに消費者からすればもう少し安くならないかなと思ってしまいますが材料費なども高くなっている現状に農家さんからしてみれば嬉しいことなんだと思うとお米の値段は高すぎず低すぎずのほうがバランスが取れて良いのかもしれないと考えました。

読んでるみなさんにお伝えしたいこと

最後に今回初めて日向用水(山腹用水路)について知ったのですが実際に目で見て、関わられている方にお話を聞いて、先人がどんな思いでこの用水路を作って、現代の人たちがどんな思いで伝統を守り続けているのかがよくわかりました。

高千穂町といえば高千穂峡や神楽などが有名ですが世界農業遺産に認定されていることでも知られています。認定されていることだけでなくどこが評価されたのかということを全体的に知っていただきたいですが、まずは今回の日向用水を含めた山腹用水路も評価され認定された理由になっていることをぜひ知っていただきたいと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございました。

文:高千穂高校 廣木麻芭  阿部倖子

取材時期:2024年11月

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