HIKOUKI-GUMO INTERVIEW ARCHIVES
time
17:08

お茶への愛情。鉄也さんのあくなき探求と行動と釜炒り茶。

name
甲斐 鉄也
organization
一心園
お茶への愛情。鉄也さんのあくなき探求と行動と釜炒り茶。

取材地について

五ヶ瀬町から高千穂町を過ぎ10分程行ったところにある日之影町七折。バスを降りると斜面いっぱいにお茶畑が広がり、頭上には青い空が広がっていました。今回お話を伺ったのは、そこで斜面を切り開いてお茶の生産を行う一心園の甲斐鉄也さんです。

一心園について

鉄也さんのお父様である甲斐一心さんは元々、牛の飼育や季節に合わせてしいたけ、お米などを育てる混合農業をされていたそうです。その時からお茶畑もありましたが、メインで作ることはありませんでした。しかし、混合農業では一年中休みが取れないこと、既存の部門の収入が下がってきたこと、元々あったお茶畑が育ってきたことも相まって、一心さんは使っていなかった斜面を切り開きお茶畑をつくりました。当時、この地域には「農業は牛を飼うこと」が文化だとされていたそうですが、それを振り切ってお茶の栽培に力を入れることを決心したそうです。ただ日之影町の平地の多くは田んぼとして利用していたため、お茶を育てることができず、裏山の斜面をうまく活用できるのではないかと考え、ほとんど手作業で山を切り開きました。

有機栽培

鉄也さんは農薬などを一切使わず、地域の資源を循環させる有機栽培をされています。薬を使うお茶農家さんでは多くの場合、菜種油を一回絞り、プラスアルファで農薬を入れて肥料を作っていますが、鉄也さんは菜種油を一回絞るのみで薬は決して使わないようにしていました。鉄也さんいわく、これは「有機栽培のこだわり」だということでした。あるものだけを利用し、資源を無駄にしないような工夫がなされていて、とても感銘を受けました。

仕事内容

一心園さんでは肥料を2月の終わりと3月の終わり、8月の終わりと9月の終わりの4回まくそうです。また、カルシウムやマグネシウム、ナトリウムなどが含まれるミネラル肥料を普通の肥料にプラスしてまいているそうです。しかし、肥料が多すぎると川に流れてしまうため環境破壊に繋がったり、窒素が多すぎると病気になってしまったりするため肥料は少なめにしていると知り、たくさん試行錯誤をしながら地域のことも考えている鉄也さんに尊敬の念を抱きました。肥料だけでなく、草もまいているそうです。もみ殻や焼酎のかすなどを混ぜることで堆肥になるとおっしゃっていました。

有機栽培の大変さ

有機栽培をしていること、そして斜面にお茶畑を作って育てていること。めったにない条件のもとでお茶の栽培をされている鉄也さんにはたくさんの苦労がありました。まず、草取りです。有機栽培がどのくらいすごいのかがいまいち実感できなかった私は、草取りのお話を聞いた瞬間「私には絶対できない・・・」と思いました。草取りのシーズンは主に夏。30度以上の猛暑のなか、除草剤を散布しないため全て手作業で斜面に生えている草を取っていきます。取材したとき実際に茶畑を登った私はこの土地を全て手作業で管理しているのかと思い、想像するだけで倒れそうになりました。傾斜立っているのもやっと。広大で急傾斜の土地を従業員5人ほどで草むしりをすることはよほどお茶が好きでないと出来ないと感じました。また、重機が斜面を登ることが出来ないため、おけを使い、歩いて肥料をまいているそうです。重いおけを持ち、急な斜面を登り、中腰で肥料をまく作業も非常に骨が折れるようだと感じました。

有機栽培の面白さ

しかし、有機栽培には大変さだけでなく、面白さもあるそうです。鉄也さんは、「儲かるとこだけじゃない、奥の深さ、面白さ」があるとおっしゃっていました。私はそれを聞いたとき、「肥料を発酵させ土にまく作業も「これいけそうじゃないかと…」と思いつき、一度試してみようと始めた」と楽しそうに笑顔で話されていたことを思い出しました。一見大変そうに感じましたが、楽しそうに話す姿はうまく出来ても出来なくても、独自の方法で試行錯誤しながらお茶を栽培している鉄也さんにとっての面白さを感じる瞬間なんだと改めて思う言葉でした。

鉄也さんの原動力

とても行動力がある鉄也さん。烏龍茶などを学ぶために台湾へ研修に行かれたそうです。その行動の根源にはどのような感情や考え方があるのだろうと思い、質問してみました。

鉄也さんの答えは、「なろう、やろうとイメージを持ってけば引き寄せることができる」というものでした。自分の気持ちの持ちようで環境を変えることができるし、大学なども「ここに行く!」と決めたら本当に行けるようになるとおっしゃっていました。この言葉を聞き、確かに技術があっても気持ちが弱ければ気持ちが強い人には印象などで負けてしまうなぁと思いました。やはり、何事にも気持ちの強さが必要だと感じました。

飲んでみた

お茶畑の見学を終え、お茶を実際に飲ませていただきました。机の上に置かれた緑茶、烏龍茶、紅茶、ほうじ茶を見て、今まで見てきたどのお茶よりも色が綺麗で、美しく、非常に美味しそうだと思いました。一口飲んで見ると、口の中に香りが広がり、感動しました。苦すぎず甘すぎず、あっさりしていて飲みやすいなと感じます。紅茶が苦手な子も「一心園さんの紅茶はあっさりしていておいしい!」と言っていました。そんな人々を虜にする一心園さんのお茶は、鉄也さんの試行錯誤の結晶です!美しく、貴重なものだなと思いました。

まとめ

今回取材させていただいて一番感じたことは、「鉄也さんのお茶に対する愛情」です。先述したように斜面でお茶を育てることは平地の何倍もの苦労があります。それを長年こなし、肥料なども研究・実践を重ね、海外へ研修に行く。愛情がなければ到底やっていけない作業だと私は思います。だからこそ、お茶もおいしく、人気があるのかなとも思いました。また、鉄也さんの甲斐さんの遺伝子組み換え原料不使用、農薬不使用といった良いお茶のために考えた”こと”を躊躇せず、どんどん取り入れていく姿勢がお茶にも現れている。そんな印象を受けました。鉄也さんの愛情いっぱいのお茶、飲んでみてはいかがでしょうか。

文:五ヶ瀬中等教育学校 江口佳奏 椎葉梅嘉 西浦芽吹

取材時期:2023年9月

記事一覧
© contrail