HIKOUKI-GUMO INTERVIEW ARCHIVES
time
16:11

我が子を見守るような愛情でトマトを育てる

name
松崎 町子
organization
ミニトマト、椎茸、水稲、繁殖牛、複合経営農業
我が子を見守るような愛情でトマトを育てる

自然の中の農園

 五ヶ瀬からバスで高千穂、日之影を経由して林道を移動し約一時間。諸塚村の山中の奥に続く細い道を進むと、視界がひらけると同時に農園やビニールハウスが姿を現しました。山を切り拓いて作られたその農園で、トマト農家を営む松崎さんにお話を伺いました。

松崎さんと農業 

 はじめに、松崎さんが農業を営むまでの経緯について教えていただきました。松崎さんは高鍋農業高校を卒業後、約24年間役場で給食調理のお仕事をされていて、農業は退職後に始めたそうです。もともと父の継治さんが農業を営んでおり、退職後約3年ほど父の手伝いをした後、継ぐことを決心したと言います。現在は父母の手を借りて3人で共同作業を行っています。

 松崎さんはGIAHS地域の特徴的な農業法である、「複合経営」を行っています。主にミニトマトを生産し、しいたけや牛、大玉トマト、お米、お茶も共に育てているそうです。数少ない複合経営農家の一員というのに加え、村内で数軒しかないトマト農家のうちの一人であるため、とても貴重な存在です。

夏秋野菜と冬春野菜

 山側と海側では、気候が違うため、トマトを育てる時期も違います。山側では夏の時期の気温が低いことを利用して、夏〜秋ごろにトマトを収穫するそう。山崎さんも夏秋野菜を育てるトマト農家のうちの一人です。

 松崎さんは私達をビニールハウスの中へ案内してくれました。ビニールハウスに入ると、トマトの茎が巻き付いた支柱がずっと奥まで続いていました。その道はとてもまっすぐで、手入れが行き届いていました。トマトの茎をよく見てみると、すべてが横に這うような形で伸びていました。松崎さん曰く、収穫しやすくしているのだそう。一気に曲げることはできないため、茎を横に曲げて支柱にくくりつけ、伸びていく茎を少しずつ下に詰める方法を取っているという。収穫以外の面では、重みで茎がちぎれたりしないようにするための配慮でもあるそうです。取材に訪れたのは収穫時期が過ぎた11月頃。トマトの茎には、青い小さな実がなっていました。

 

成長と心境

 ミニトマトにも訪れる変化。そんな中でも松崎さん自身にも感情が変化する場面があると言います。苗の花が咲き、実がなり、赤くなる。このようなトマトの一つ一つの成長に感動して、出荷が終わると少し寂しくなる、と松崎さんは言われました。松崎さんにとってトマトの成長は子供の成長に似ているそうです。

 松崎さんの所有地で、他2世帯のトマト農家の方も生産を行っています。より良いトマトを育てるために、技術について様々なことを教わっているそうです。同じ土地で共にトマトを育てていることを知り、人と人とが協力するあたたかさを感じられました。

他者との繋がり

 地域の人と協力していることはなんですか?と質問すると、『トマト部会の人たちとの情報交換や交流を大切にしている』と松崎さんは答えてくださいました。トマトを生産する者同士で支え合う大切さを感じました。生産者の間だけでなく、地域の人々との繋がりもあるそうです。見た目の状況が良くないために商品にならないトマトを、地域の人々と交換したりもすると言います。

 松崎さんが働いている農園は、自宅のある諸塚村の集落から30〜40分ほどの場所にあり、毎日山道を登って通っています。朝から仕事に精を出す松崎さんの姿を見て、『私も頑張ろう』と思う人もいるそうです。

今までの経験

 「今まで経験してきた中で、これは大変だったなって思う出来事はなんですか?」という質問に松崎さんは、『沢山あったけど忘れました』と答えてくださいました。日々忙しいため、辛いことがあってもかまっていられないそうです。しかしその代わり、トマトの成長が楽しみだから頑張れると松崎さんは語ります。

 他にも、笹の葉の間から木漏れ日が漏れる林の中に、たくさんの原木が並べられており、そこで原木しいたけを栽培しています。竹林の中で作られているので、春先になるといのししが、たけのこを掘り返しに来るとおっしゃっていました。農園の近くでは、うり坊にもよく遭遇するそうです。自然界が間近にあることを改めて実感するお話でした。

商品にならないトマトの行方

 ミニトマトを販売していく上で出てきてしまう割れてしまったもの、色や見た目の悪いものは出荷できずに残ってしまいます。もしそれらを加工し、販売する業者が諸塚村内にもあればそれらも美味しくいただくことができ無駄を省けるのではないだろうかと松崎さんは考えているそうです。

松崎さんのアナザースカイ

 松崎さんにとって特別な場所は、農園から約15分ほど下った場所にある倉の平。倉の平は、諸塚村や周りの山々を見渡すことのできる展望スポットです。仕事帰りにそこから見る夕日はとても格別だと松崎さんは語ります。毎日見る景色ですが、見るたびに感動し、一日の終わりを実感するそうです。

トマトへのこだわり

 最後に松崎さんのトマトを育てる際のこだわりについて尋ねました。

その際取材に同行頂いた諸塚村役場の伊藤さんが『松崎さんが育てている大玉トマトは、地元の人が競って買うほど人気がある』と話してくださいました。そんな人気のあるトマトを育てる際に、あることを大事にしていると言います。それはトマトが病気になることがないように、元気になるように日々観察を行うことです。子供のように日々の観察を大切にすることで、より良いトマトが出来上がるのです。このような思いのこもった松崎さんのトマト、私達も食べてみたくなりました。

我が子のような愛情で育てるミニトマト、活力ある松崎さんに私達もパワーをもらえた取材活動でした。

文:五ヶ瀬中等教育学校 南村遥佳

取材時期:2022年10月26日

記事一覧
© contrail