私達は椎葉村にいるとある人のもとを訪ねました。その人は代金をいただくにも関わらず一言「ありがとう」と言葉をもらえる飲食業に携わっています。しかし、20代の頃はブームに乗っかってIT企業に勤めていたこともあった。そしていまは、蕎麦屋さんとお菓子屋さん。
彼が営む2つのお店は似ても似つかないようにも思えるが、どちらのお店も地域に根付いた飲食業を営んでいらっしゃいます。
そんな椎葉村の椎葉雅史さんにお話を伺いました。

椎葉昌史さんのこれまでの経歴を教えて下さい

椎葉さんは、椎葉村の出身で、中学生までの15年間は椎葉で過ごしました。大学進学時に宮崎を出て福岡県へ。大学時代の4年間飲食店やホテルの厨房でアルバイトに明け暮れたと話されていました。4年間も続けて熱中してバイトができたのは、その職業が「かっこいい」と思っていたからだそうです。当時の行動基準は「やることがかっこいいと思えるか」で判断されていました。飲食業は、食事を提供して、代金を頂戴するのに「ありがとう」と言葉をもらうのが嬉しくて長く続けていたとも話されていたのが印象的でした。
就職活動では、その頃IT産業が黎明期で「これから市場が大きくなぞ!」と見聞きしており、2年間IT企業の営業部に所属することにしました。ただ、その時の仕事は詳細は省きますが自分が「かっこいい」と思えなくてすぐ退職してしまったそう。
IT企業の退職後は大手居酒屋チェーン店の「和民」という居酒屋で働きます。配属は東京のお店になり、一路東京へ。社員3名に対して大学生のアルバイト40名ほどで店舗運営されていました。運営の多くを大学生のアルバイトの方にお願いすることも多く、また自分が大学生時代に飲食店でのアルバイトをした経験則から運営をする中で働いてくれる学生と仲良くなるのは必須条件で、まず学生と仲良くなり、一生懸命働いてもらえる環境を整えることに苦心されたそうです。努力の甲斐ありその店舗で年売上約1億円を叩き出します。お客様アンケートでも多くが高評価。前年比で売上も客数も増加。その時に社内表彰で最優秀店長賞を受賞されたそうです。
なんでUターンしたんですか。
最優秀店長賞をもらったことによって、会社の中でかなり有名になり、鼻高々の天狗状態になっていたと話す椎葉さん。それから新店舗の店長を立ち上げから任されることに。しかし、多くの人に期待されましたが毎年200万の赤字を出す店舗運営をしてしまいます・・・。周囲の人の期待を裏切り、天狗だった自分からは少しずつ仕事仲間が離れていきました。『振り返るとめちゃくちゃ横柄な態度もとってたと思います』と振り返る椎葉さん。さらにそのタイミングで東日本大震災が発生しご自身も被災。思い悩み自分自身もどんどん落ち込んでしまいました。そこでこのままでいいのかと、思っていたこと悩んだ末に30歳でUターンして、家業でお母さんが始めた蕎麦屋を一緒にすることを決めたそうです。
よこい処 しいばや(蕎麦屋)のお話を聞いていいですか。

椎葉にUターンしてからは、椎葉で1番の蕎麦屋にすると決意を決めた椎葉さん。お店で取り扱うのは椎葉で取れる蕎麦の実を使った手打ちそば。それはとても美味しく私達も昼食で頂いたものはとても美味しかったです。ただ、椎葉村内で取れるそばの実を使って作るそばには、素材としても売上としても小さな村ですので限界がありました。試行錯誤していたそんなときにとある研修会に参加されます。そしてある言葉を聞きます。
その言葉は「1つの地域(小さい枠組み)でやるのは古い。複数地域(広い範囲)をひっくるめてなにか新しいことを。」でした。この言葉を聞いた時、ハッとしたそう。椎葉だけに拘らないくていいんだと。そこから、まず世界農業遺産高千穂郷椎葉山地域の素材を使ってなにかできないかと考え、高千穂の米、五ヶ瀬の釜炒り茶、日之影の柚子、諸塚のしいたけを、椎葉のそばに混ぜた「九州山蕎麦」を開発しました。これは優良ふるさと食品中央コンクールで農林水産大臣賞(日本一)を獲得することができました。
そして、蕎麦だけでなく蕎麦を使ったお菓子も製造しようと着手。そこからあの言葉を思い出し、蕎麦の実をつかったフロランタンや、宮崎素材を使ったバターサンドなどの製造をスタートしています。現在は多くのメディアへの掲載、賞の受賞など輝かしいラインナップになっています。


これから新しいことに挑戦人に伝えたいことはありますか。
椎葉さんに最後に「私達みたいに新しいことに挑戦する人になにか一言」とお聞きすると、
『人との繋がりを大切にして欲しいです』と話されました。詳しく聞くと、『物事は何においても工夫すること、考えることが一番で、工夫する時は一人じゃなくて、友達や先輩など繋がりのある人と一緒に考えてみてください。そこから新しいものが生まれたりすると思います、バターサンド誕生の際も、コロナ禍で宮崎の農家さんが困らせた顔をしてお店に来られ取引先が見つからず、素材を買い取って欲しいと来られました。当時の私は力になることができず、知人の取引先を紹介することしかできませんでした。ただ、その後、その素材が実はバターサンドに使うフルーツバターの素材として使用することになって、私もなにか力になれたかと安心しましたし、よい縁に恵まれたと感じました。』
僕達は椎葉で人との繋がりを大切にして、繋がりのある人達と助け合い、日々工夫しているかっこいい大人の人に出会うことができました。
そんなかっこいい人の菓te-riが作るバターサンドはとても美味しかったです。

文:五ヶ瀬中等教育学校 中村
取材時期:2022年7月23日取材